モエレ沼公園では、2015年をモエレ沼公園のグランドオープン10周年記念年として、いま、新たな風景を紡ぎ出す作家の作品展を、イマジナリー・ランドスケープス・シリーズと題し、開催いたします。
第2弾は「吉田夏奈|プルメリアに映る雪」です。
吉田夏奈は、山に登る、海に潜るといった自らの体験を基に風景を描くアーティストです。吉田が冒険の旅の中で出会った想像を超える風景。身のすくむような恐怖や身体を包む自然の気配。それら視覚的、身体的な記憶は一体となり、パノラマ状の風景画として創出されます。自らを取り巻く自然、世界と対峙するその鮮烈なまなざしは今、地球上の自然風景からその内部へと移り、地球を貫き、根源的な宇宙の存在へと向かっています。
本展では、プルメリアの花をモチーフとした時間と空間、そして宇宙とを繋げる新作シリーズ《プルメリアに映る雪》を発表します。プルメリアの花びらは渦を巻くようにして花芯に繋がり、中心へと視線を誘う形状です。その花びらには植物や海、虹、雷、雪などの自然、気象現象が描かれます。
雪の記憶を持つ北国の庭に現れる南国の不思議な花。それら花々を、覗き込み、あるいは見下ろすことによって得られる感覚は、新鮮な驚きをはらんだ美的体験となることでしょう。
北と南、夏と冬――遠く隔たれた場と時間とを結ぶ、イマジネーションの宇宙をどうぞご覧ください。
プルメリアに映る雪のように
モエレ山の山頂から360度を見渡すと、
地球という球体の、ある一点に立っていて、大地と空に挟まれる。
ゴムボールと、そのゴムボールより一回り大きいガラス球の間に挟まった、目には見えない埃のようだ。
遠くで、雨雲が発生し、そこの部分だけ雪が降る。
雷は、ゴムボールに針を刺すような広域なスケールで見渡せる。
夕日は円弧をぼかしたように空を染め、
ポプラの影は、いつもより、ゆがんで長く見える。
だから、いとも簡単に、ここでは宇宙に思いが行き着く。
成層圏へ一瞬でワープ、オーロラのごとくしばし遊覧、雷のように一気に地上に落ちる。
宇宙から地球に帰ってくると、
たくさんの生命が同時にうごめき、それぞれの生活場所のレイヤーが重なり合っているが、
お互いに棲み分けられた、それぞれの世界を知らない。
ほとんど知らない世界と共に、しかし、皆に同じく空があり、雨が降り、夜が来る。
同じ空間(space)で、同じ瞬間(time)に。
地球上のどこか南国で、プルメリアの花が咲く頃、モエレ沼では大雪が降った。
現れては消え、消えては現れる上空を纏う雲の隙間から、しばしの間出た虹が、そこを過ぎ去るカラスに映る。
モエレ山からみえる広大なスケール感に、生命も宇宙も象徴される。
ここは、公園のふりをした、宇宙ステーション。
―― 吉田 夏奈
作家プロフィール
これまでの作品
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関連プログラム
|吉田夏奈ワークショップ「つくろう!花びらアート」 | |||
日時:7月26日[日]13:30-15:30 |
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|週末ミニコンサート | |||
日時:8月15日[土] |
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|クロージング・アーティストトーク |
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2015年7月25日[土]-8月30日[日]